「仕事用のPCが欲しい。動画も少し編集したい。予算は10万円」
この条件で家電量販店に行くと、たいてい性能の足りないノートPCを掴まされます。同じ10万円でも、中古のオフィス機を土台に組めば、まったく別物のマシンが手に入ります。
私が実際にやっている方法です。ヤフオクで企業から放出された中古のデスクトップを買い、メモリを足し、必要ならグラフィックボードを載せる。これでCanva・Claude Code・DaVinci Resolve・CapCutまで動きます。
前回の記事で「オーバースペックなPCを買うな」と書きました(→ MacBook41万vs自作10万|PC選びの罠と本当に必要なスペック)。今回はその続きで、具体的に何を買えばいいのかという話です。
なぜ「中古オフィス機」なのか
企業のPCは、3〜5年で一斉に入れ替わります。壊れたからではありません。リース期間が終わるからです。
その結果、まだ十分に動く機体が、大量に中古市場へ流れます。しかも企業向けのマシンは、家庭用の格安PCより作りがしっかりしています。
- 法人向けは耐久性重視の設計…24時間つけっぱなしの環境を想定しています
- メンテナンスしやすい…部品交換を前提に作られていて、工具なしで開く機種も多い
- 台数が多いので相場が安い…同じ型が何万台も流れてきます
- 状態が読みやすい…事務所で静かに動いていた個体がほとんどです
古民家を買って直して住むのと同じ発想です。土台がしっかりしていれば、手を入れる価値があります。
中古を買うなら、ノートよりデスクトップ
同じ「中古の法人機」でも、ノートPCは別物だと思ってください。
デスクトップは机の上に置きっぱなしです。動かされていないので、個体ごとの差が小さい。外装に多少の傷があっても、中身の消耗はたかが知れています。
ノートは持ち運ばれています。そして、どう扱われたかは人によって千差万別です。
- バッテリーがくたびれている…消耗品です。数年使われた個体は、まず劣化しています。交換できない機種も多く、できても数千円〜1万円以上かかります
- 液晶にスレ・キズ・ドット抜け…毎日開け閉めされ、カバンに入れられています
- キーボードのテカリと沈み…よく使うキーだけ反応が悪い、ということが起こります
- ヒンジ(画面の付け根)のガタ…ここが割れている個体は、直すと高くつきます
- 底面の熱…膝の上や布団の上で使われていた個体は、内部にホコリが詰まっています
外から見て分かるのは液晶と外装だけで、バッテリーとヒンジは写真では判断できません。ここが中古ノートの怖いところです。
※もっとも、たまに「ほぼ未使用」の異常にきれいな個体も混じっています。買われたけれど、ろくに使われないまま入れ替え時期を迎えたやつですね。窓際の席で眠っていたのでしょうか(笑)。当たれば儲けものですが、それを狙って買うものではありません。
中古で予算を抑えるなら、デスクトップ。これが結論です。持ち運びが必要なら、この記事の最後で別の答えを出します。
選ぶときの絶対条件:Windows 11に対応しているか
ここだけは外せません。Windows 11には、はっきりした足切りラインがあります。
- CPU…Intelなら第8世代Core以降、AMDならRyzen 2000シリーズ以降
- TPM 2.0が有効にできること
- セキュアブートに対応していること
目安として、2018年以降に発売されたビジネス機なら対応しています。それ以前の機体は、どれだけ安くても避けてください。安物買いになります。
具体的には、このあたりが定番です。
- 富士通 ESPRIMO Dシリーズ(D588 以降)
- DELL OptiPlex 3060 / 5060 / 7060 以降
- HP ProDesk / EliteDesk 600 G4 以降
- Lenovo ThinkCentre M720 以降
私はヤフオクで2019年モデルを買って使っていますが、問題なく動いています。
形を間違えると詰みます:スリム型とミニタワー
同じ機種名でも、筐体の形が数種類あります。ここが一番の落とし穴です。
| 形 | 拡張性 | 向き不向き |
|---|---|---|
| ミニタワー(MT) | ◎ グラボも電源も交換できる | 手を入れるならこれ |
| スリム型(SFF) | △ ロープロファイル品のみ | 省スペース優先の人向け |
| 超小型(マイクロ/Tiny) | × ほぼ増設不可 | メモリとSSDだけ足す人向け |

グラフィックボードを載せる予定があるなら、ミニタワー(MT)を選んでください。
スリム型でも載せられますが、条件がつきます。
- ロープロファイル(LP)対応の短いカードしか物理的に入らない
- 電源が180〜260W程度で、しかも独自形状のため交換が難しい
- 結果、補助電源のいらない75W級のカードが上限になります
制限が嫌なら、素直に自作する
中古オフィス機は安くて土台が良い一方で、メーカーが決めた枠の中でしか手を入れられません。
- 電源が独自形状…容量を上げたくても、市販の電源に交換できないことがあります
- ケースが狭い…大きなグラフィックボードもCPUクーラーも入りません
- マザーボードが専用設計…将来CPUだけ載せ替える、という遊びができません
- 拡張スロットが少ない
スリム型に載せるなら、補助電源のいらないロープロファイル品から選ぶことになります。
GTX 1650 グラフィックボード ロープロファイル
補助電源が要らないクラス。中古オフィス機に載せるならこの範囲で
この制限が嫌なら、パーツから自作した方が結果的に安上がりです。自作なら、電源もケースも自分で選べます。壊れた部品だけ交換して、10年でも使い続けられます。
私のメインマシンは6年落ちの自作機ですが、いまも現役です。中身を少しずつ入れ替えているので、古いという感覚がありません。「買い替える」のではなく「直しながら使う」ができるのが自作の強みです。
- とにかく安く、手早く → 中古オフィス機
- 自由に手を入れたい、長く使いたい → 自作
どちらが正解ということはありません。予算と、自分がどこまで触りたいかで決めてください。
10万円の内訳(例)
私の考える配分です。数字は相場の目安で、時期によって動きます。
| 項目 | 目安 | メモ |
|---|---|---|
| 中古オフィス機(第8世代Core以降・ミニタワー) | 2〜4万円 | Windows 11対応が絶対条件 |
| メモリ増設(中古DDR4) | 5,000〜1万円 | 8GB×4枚で32GBが狙い目 |
| SSD(1TB) | 1〜1.5万円 | 付属が256GBなら足したい |
| グラフィックボード | 1.5〜3万円 | 動画編集をするなら。事務だけなら不要 |
| モニター | 1.5〜2.5万円 | ここをケチらない。自宅作業なら2枚推奨 |
| 合計 | 7〜10万円 | 用途次第で削れます |
メモリは新品を買わないでください。いま新品のDDR4は1年前の3倍以上に高騰しています。中古なら数千円です。買い方は別記事にまとめました。
→ メモリ3.4倍!中古DDR4で32GBを安く作る買い方と注意点
新品で確実に行くなら、ツクモが扱っているKLEVV(SK Hynix系)が無難です。

KLEVV DDR4-3200 16GB(8GB×2枚)デスクトップ用
ツクモ扱い/SK Hynix系ブランド。新品で確実に行くならこれ
SSDは容量を優先する
中古オフィス機は256GBのSSDが付いていることが多く、これはすぐ埋まります。1TBに載せ替えるか、増設するのがおすすめです。中がHDDだった場合は、ここを替えるだけで体感が別物になります。

Crucial BX500 SSD 1TB(2.5インチ SATA)
3年保証/中古PCの容量アップに。HDDから替えると体感が別物になります
自宅で作業するなら、モニターは2枚が必須
本体をケチってでも、ここは削らないでください。毎日目に入るもので、作業効率に直結します。
そして据え置きで使うなら、モニターは2枚にしてください。贅沢ではなく、仕事の速さが変わります。
- 資料を見ながら書く…片方に元データ、片方に作りかけの書類。切り替えるたびに集中が切れます
- AIを使うなら、ほぼ必須…片方にAIとのやり取り、片方に作業中の画面。行ったり来たりが消えます
- Excelと請求書、メールと添付ファイル…事務仕事はほぼ「2つを見比べる」作業です
- 動画編集…タイムラインとプレビューを別画面に置けます
1枚で作業するのは、机の上に書類を1枚しか広げられない状態と同じです。ウィンドウを切り替えている時間は、積み上げると馬鹿になりません。
2枚目は同じ機種で揃えると見え方が揃って快適ですが、まずは手持ちのテレビや古いモニターを繋ぐだけでも効果があります。中古のモニターなら数千円台からあります。
机が狭くなるのが嫌なら、モニターアームで浮かせると一気に広くなります。

I-O DATA 23.8インチ フルHDモニター(ADSパネル・3年保証)
PC本体より先に投資して良い場所。2枚並べると作業効率が変わります
なお、中古のオフィス機はHDMIとDisplayPortの両方が付いている機種が多いので、2枚挿しはそのままできます。買う前に映像出力の数と種類を確認しておいてください。
この構成で何が動くか
10万円のマシンで、実際に日常業務が回っています。
Canva(画像・資料作成)
ブラウザで動くので、メモリさえあれば快適です。タブを開きっぱなしにするので16GB以上を推奨します。
Claude Code(AIによる開発・作業自動化)
処理の本体はクラウド側なので、手元のマシンに高い性能は要りません。エディタとブラウザが快適に動けば十分です。私は10万円クラスの自作機で、実際に業務システムの開発まで回しています。
DaVinci Resolve(動画編集)
無料版でもプロ用の機能が揃っている編集ソフトです。ここだけはグラフィックボードが効きます。GPUが書き出しを担当するので、載せるかどうかで待ち時間が変わります。逆に言えば、動画をやらないならグラボは要りません。
選ぶときは、補助電源が要らないクラスにしてください。中古オフィス機の電源は容量が小さく、しかも交換しにくい形状のことが多いためです。
CapCut(ショート動画)
インフルエンサーがやっているようなショート動画の編集なら、これで完全に足ります。縦型の短尺は素材も軽く、書き出しも短い。ここに30万円のマシンは必要ありません。
Officeはサブスクか、買い切りか
Microsoft 365 のようなサブスクは、「毎年払い続ける額」で判断してください。年1万円強を10年払えば10万円以上。マシン1台分です。
そして意外と知られていませんが、2026年現在も買い切り版(永続ライセンス)は購入できます。Office Personal 2021、Home & Business 2021、Professional 2021 といったラインナップです。
| サブスク(Microsoft 365) | 買い切り版 | |
|---|---|---|
| 支払い | 毎年払い続ける | 一度きり |
| 常に最新版 | ○ | ×(そのバージョンのまま) |
| 複数台・クラウド容量 | ○ | 基本1台 |
| 向いている人 | 常に最新が要る/複数端末で使う | 1台で長く使う個人事業主・副業 |
Microsoft Office Home & Business 2021(買い切り版)
サブスクではない永続ライセンス。仕事で使うならケチらない
副業や一人でやっている事業なら、買い切り版で十分というのが私の判断です。WordとExcelの機能は、この数年で劇的に変わってはいません。
仕事で使うなら、Officeは必須です
ここは、はっきり書いておきます。ビジネスで使うなら Microsoft Office は必要です。無料の互換ソフト(LibreOffice など)で代用しようとすると、いずれ事故ります。
- レイアウトが崩れる…互換ソフトは「開ける」だけで、「同じに見える」保証はありません。崩れた見積書や請求書を取引先に送った時点で、信用に傷がつきます
- 関数やマクロが完全に一致しない…エクセルの複雑な計算式やマクロは、互換ソフトで動かないことがあります
- 相手がOffice前提で送ってくる…取引先から届くファイルはWordとExcelです。こちらの都合で環境を変えられません
- 印刷とページ設定がずれる…紙で出す書類は、ここが致命的です
節約していい場所と、してはいけない場所があります。PC本体は中古で十分、メモリも中古で十分。でもOfficeはケチらない。これが結論です。
安く買うなら「中古のパッケージ」。危ないのは「キーだけ」
私はヤフオクで Office Home & Business 2019 を6,000円で落札して使っています。サブスクなら1年分にもならない金額です。
ただし、安ければ何でもいいわけではありません。危険なのは中古そのものではなく、買い方です。
避けるべきもの
- プロダクトキーだけを売っている出品…使い回されている可能性があり、あとからライセンスが停止されることがあります
- 販売元が不明な激安サイト…数百円〜千円台のものは、まず正規ルートではありません
- 「〇〇台まで使えます」と書いてあるもの…ライセンス違反です
比較的安全なもの
- パッケージ(箱)やPOSAカードの現物がある中古…写真で現物とプロダクトキーの封の状態が確認できるもの
- 出品者の評価が十分にあり、本人確認済みのアカウント
- 相場から極端に外れていない価格…Office 2019/2021 が数千円〜1万円台なら現実的な範囲です
なお、OEM版・DSP版は本来PC本体に紐づくライセンスで、単体での譲渡はマイクロソフトの想定外です。私は自己責任で買っています。確実に安心を取るなら、Microsoft公式ストアや正規取扱店の買い切り版を選んでください。数千円の差で、後々の面倒が消えます。
足りなくなったら、どこを足すか
この構成の良いところは、後から足せることです。
- まずメモリ…重いと感じたら、ほぼここです
- 次にSSD…容量が埋まると露骨に遅くなります
- 動画をやるならグラボ…書き出し時間が変わります
- モニターの2枚目…作業効率だけで言えば、これが一番効きます
最初から全部盛らない。困ってから足す。これができるのがデスクトップの強みです。ノートPCではこうはいきません。
「でも持ち歩きたい」という方へ。母艦をこの構成で組んで、外はChromebookから接続するという手があります。
→ ノートPCは本当に最適解?デスクトップ+Chromebookリモートという答え
まとめ:ゲーミングではなく「仕事が回る」基準で選ぶ
- 中古のオフィス機は土台が良い。企業のリース落ちが大量に流れています
- Windows 11対応が絶対条件。第8世代Core以降/Ryzen 2000以降、2018年以降のモデル
- 形はミニタワー(MT)を選ぶ。スリム型はグラボと電源で詰みます
- メモリは中古DDR4。8GB×4枚で32GBが安く作れます
- Canva・Claude Code・CapCutは、これで十分動く。DaVinciを使うならグラボを足す
- 後から足せるのがデスクトップの強み。最初から盛らない
10万円で「仕事が回るマシン」は作れます。30万円のマシンを買って、エクセルとブログ更新に使うより、よほど気持ちのいいお金の使い方だと思っています。



コメント